サンタンヌ病院
ブログ
精神科医の呟き.
R61➕. banal contents
R81➖. violence, horror
PG-31. Oyaji-gags
2023年11月3日
奇しくも、今日は文化の日。このホームページ作りで1日過ごした。いつもは、精神科の患者さんを前に、「この病は何だろう?」と考える毎日だ。我々のところに診療を求めてこられる患者さんはについては、症状は深刻であるにかかわらず、その症状の背景(原因)は、形としてとらえることが未だに誰にもできていない。もともと精神科の疾患であった「てんかん」や「認知症」は、脳波計の発明や画像診断の発展の結果、症状の背景が目で見られるようになり、理解が進むようになった。と同時に、精神科医が担当する疾患ではなくなった。
さて、精神の病の本体は、いったい何なのだろうか?
2024年1月14日
精神のありかは、現時点では、頭蓋骨の中にある「脳」ということになっています。この1.5Lほどのスペースには100億個ほどのニューロン(細胞)が詰まっています。ニューロンは樹状突起で信号を受け、軸索と呼ばれる繊維状の構造でその信号を次のニューロンに伝えます。信号は一方向にしか伝わりません。そういう意味でニューロンは半導体です。脳はコンピュータに似た情報処理装置です。コンピューターでもそうですが、100億の半導体をケースの中に放り込んでも、何も起こりません。コンピュータの場合は人間が設計図を描き、それに従って集積回路を作り、配線し、人間が書いたプログラムの指示で機能を発揮します。
それでは、
人間の脳の場合は「どこに設計図があり」、「誰がプログラムを書く」のでしょうか???
2024年1月26日
子供の時、半導体1 個のおもちゃがありました。ゲルマニュームラジオです。放送局で発信した電波をアンテナで捉え、コイルとコンデンサーで周波数を合わせ、半導体で整流し、イアホンの膜を振動させて聴く。乾電池で電力を供給する。放送局の方では規模は違うが、同じような部品を逆さに使い、音声をマイクで捉え、電波に変換してアンテナから発信している。いまや、通信は携帯やスマホで、誰もが双方向でやっている。ここで、私が言いたいのは、人間は通信するということと、通信するには、双方が同じような装置と、同じプロトコルを持っていなければならないと言う事です。
2024年2月19日
人間は生まれながらにして通信すなわちコミュニケートする能力があるわけではない。自分と他人を区別しているわけでもなく、自分と自分と似た他人が居て、その間にはっきりとした皮膚による境界と皮膚の間には空間があることを知るのに3年程かかる。その頃に言語によるコミニュケーションの活動が始まる。その3年間に、脳には視覚刺激のなかに人の顔や表情を捉えるプログラム、音刺激のなきら言葉を抜き取るプログラムを勝手に作り上げるのである。さらには二足歩行をするための複雑なプログラムをも作ってしまう。これは不思議なことである。
2024年3月10日
ニューロンは筋線維と同様興奮細胞である。静止した状態では、細胞膜を挟んで電位差がある(分極)、活性化(興奮)した状態ではその電位差が解消する(脱分極)。静止した状態は分極した「0」、興奮した状態は脱分極した「1」。100億個の0と1の組み合わせの時間変化が、脳という臓器の本質なのである。
2024年3月17日
ということは、脳の機能は2の100億乗の情報量(1,250,000,000bytes=1.25GB)を持つもの時間変化になるのか?ニューロンはばらばらな活動をしていない。回路を作って、お互いの活動を制限するので、2の100億乗より少ないのか?たぶんもっと大きな数でないといけないような気がする。これについては、いろいろな試算があり、枝分かれやシナプスの数を考慮すると、上の数値をはるかに越える無限大数になるらしい。
ところで、脳のプログラムはコンピュータの場合のように機械語やC-言語のような書き表わせる言語で書かれてはいない。ニューロンとニューロンの結びつきやネットワーク、すなわち構造が言語なのである。これを読み解くこと、これが「脳科学」の課題である。脳にはどのくらいのプログラムが書き込まれているか?その最大量がある意味での脳の情報量である。脳の使用している言語は構造そのものであるため、シャンポリオンが解読した古代エジプトの象形文字よりは、古代インカ帝国が使用していたという、紐の結び目文字の方向であろう。
情報量について言えば、遺伝子はまさに生物についての情報を保ち、複製していく装置である。この情報については解析されており、情報量も既に計算されている(750megabites)。脳の持つ情報量よりはるかに、少ない。つまり、遺伝子は脳の、少なくとも完全な、設計図ではない。
2024年3月20日
昔、精神科医の集まりで、解剖学者の養老孟司先生が講演しました。その中で、こうおっしゃいました。
「私は学生にニューロンを教える時、黒板に1.5mほどの1個のニューロンの絵を描きます。ニューロンをこのスケールで描いて思うのは、1個のニューロンがこの大きさだったら、脳全体は山手線の内側程の大きさになる。その研究は、一生かかっても終わらないので、私は手をつけない」と。
もっと昔、私が学生だった頃、電子顕微鏡が普及し、細胞の微細な構造が可視化されていました。その手法で、一人の解剖学者が、脳の連続する無数の折片で一個のニューロンを追い、数年かけて、樹状突起から細胞体、くねくねまがり枝分かれもする軸索の走行を明らかにして、その巨大な模型を製作し、研究室の天井からぶら下げておいたそうです。これ自体、誰も真似ができない偉大な作業でしょう。しかし、この手法で、脳全体を明らかにするなんて、この解剖学者は、万年かかることを甫(はじめ)てしまったわけです。
古代インカ帝国の結び目文字の解読のほうが早いですね。
2024年4月11日
生物は環境を乗り越えて、遺伝子を繋ぐために、数の多さ(ここでは大数ということにする)を手段とする。シャケは産卵する卵の数が大数である。一つの個体が生き延びる確率はわずかであるが、らんの数が大数である為に種は滅びない。covit19は世界をさわがせたが、病原性のウイルスは分裂できる環境に辿り着くと(感染すると)、無限に分裂を続ける。変異する確率が増え、宿主の免疫による攻撃をのがれる突然変異種が生まれる確率がたかくなる。ウィルスは秒単位で大数を実現する。それが感染を広める。人はこのスピードで突然変異は起こらない。哺乳類の安定した変異種なんて万年の単位で生じていないのではないか。アフリカの草原のヌウやシマウマの群れ、環境の変化や猛獣の攻撃を生き延びるのにふさわしいくらいの数である。しかし、魚や昆虫の繁殖に比べれば大した数ではない。しかも繁殖は1年に1回、これを繰り返しても10回程度だろう。この程度の数で種を保存できるのは何故か。もっと極端には、人間である。人間が個体を増やせるようになるまで少なくとも15年、産んだ個体を生殖可能年齢まで育てるのにさらに15年、30年いきなければこのサイクルは持続しない。この期間に産める子供の数は10人程度。この図式の中に、生物の武器であった大数は現れてはこない。
何故か???
2024年4月16日
ニューロンと神経細胞は同じものです。同じものですが、せっかく二つあるので、敢えて使い分けをしましょう。ここでは、神経細胞のうち、脳のかいろに組み込まれて実際に信号を伝達することに寄与しているものをニューロンと呼びましょう。繋がっていてもいなくても、細胞としてニューロンになるべく分化したものを神経細胞と呼びましょう。神経細胞の数は成長と共にどんどん増え、成人するらいの時に最大になり、あとは年齢ととも、減っていくとおもいますか?後半はその通りです。しかし、前半は違っています。神経細胞のかずが、最高になる年齢は、なんと‼️
次回にしましょう。
2024年5月18日
私が、医学部を卒業していらい耳にして、結構驚いた概念は、神経細胞のアポトーシスです。ある日先輩が、神経細胞は自殺するんだよ、アポトーシスというだよ、神経細胞が死なないと、ニューロンの回路はできないんだよ、と教えてくれました。それを説明するのに先輩は、浅草の演芸上の切り絵師を引き合いに出しました。切り絵師はお客さんからお題をもらうと、白い紙に鋏で一筆で、そのお題の図をみごとに切り抜く、切り屑が落ちないと図にはならない。まず神経細胞も分裂できる段階(神経原細胞とか神経母細胞とよばれるかもしれないが)で分裂出来るだけ分裂するが、切り絵の切り屑のように落ちていく部分がないと「図」にならない。すなわち回路にはならない。私はプリント配線の銅のフィルムの模様を連想し、「プリント配線の図柄には隙間が必要なようにですね」と言ってみたが、先輩の反応はいまいちで、どうも潔く消えていく細胞群にに感情移入しているようで、「一粒の麦、落つればだ」と言った。この先輩は精神病理学を専門にしており、時に訳のわからない事を言うことでなを馳せていた。
分化した神経細胞は分裂しない。すなわち神経細胞の数が最大に達するのは、盛んにニューロン回路が形成されることでアポトーシスも盛んさ起こる、その直前の胎児期から幼児期の頃のいつかということにな。
脳はアポトーシスでまず、神経細胞の数を減らし、さらに加齢で数を減らすのだ。
2024年6月16日
さてどの神経細胞が生き残り、どの細胞が消え去るか、この辺はかなりラフな現象である。さまざまなバリエーションがあるはずた。遺伝子がコントロールできない偶然がとり行う現象である。しかしこれでも、出来上がったものは人間の脳である。すなわち人間の脳、ニューロン回路はかなり遊び、余裕のあるものらしい。
一方で、生き残りを”宣言”された神経細胞は長ければ、100年も生きなければならないのである。なぜなら神経細胞は再生しないからである。こんなに長い時間生きなければならない細胞は他にない。皮膚を見てください。毎日死んで毎日生まれています。こういう意味で神経細胞は頑丈です。robustという英語が当てはまります。
神経回路は、出来上がる時には、かなりいい加減で、代替えもきくような余裕のあるもので(redundancy)、バリエーションも人間の数ほどであるが、一回出来上がると、頑固なものである(robustness)。
もともと私の問題は、「精神障害」と呼ばれる人がいて、その原因が見えてこないのはなぜか?であったが、人間の脳は出来る瞬間に、偶然が織りなすバリエーションがすべての可能性をのみこんでおり、言葉を変えれば、最初からありうるものを偏奇と捉えて、正常者と言われるそれ以外の人(このバリエーションは極めて大きい)、物質的な違いを論じても無駄であろう。少なくとも、遺伝子の中に生物的マーカーを発見することはできない。
ある患者さんの旦那さんが、自分の妻の双極性の気分の変化について、「気分の変化も個性の一部ですから」と平然と言ってのけたのは、とても示唆に富む一言であった。